【超おすすめ記事ご紹介】安田峰俊さん「『銃弾が飛び交い、食べるものはない。戦場は想像とはまったく違った』ウクライナ軍に参加した台湾人義勇兵の告白」(前編)および「ウクライナ・ロシア戦争に参加した台湾人義勇兵が本音で語る『中国との対峙』のリアル」(後編)

ロシアによるウクライナ全面侵攻4年目の節目にあたる昨日(2月18日)、現代ビジネスに安田峰俊さんによる大変に興味深い記事が掲載されました。以下、私が見聞きしたこと、考えたことや、ウクライナでの議論も織り交ぜながら、この記事の読みどころをご紹介させてください。
東野 篤子 2026.02.19
誰でも

ジャーナリストの安田峰俊さんが、侵略開始後まもなくウクライナ義勇兵として参加した台湾の若者にじっくりインタビューされています。前編後編に分かれている記事ですが、非常に興味深く一気に読んでしまいました。

記事へのリンクは以下の通りです。

新しい発見があったり、これまで私が伝聞レベルで聞いていたことが裏付けられたりと、私自身はとても勉強になりました。以下、とくに興味深く感じた部分をご紹介します。

なお以下では、「銃弾が~」記事に関しては「前編」、「台湾人義勇兵が~」記事に関しては「後編」と記載させていただきます。以下、カッコ内太字は安田さんの記事からの抜粋であり、矢印のあとは東野のコメントです。

1)「開戦から時間が経って市民の関心は低下したものの、それでも日本よりはウクライナ情勢への注目度は高い」(前編)

↑ 2024年から2025年にかけて、私がヨーロッパの安全保障関連会議(GLOBSECやワルシャワ安全保障会議)に参加すると、日本とは桁違いの「台湾の気合い」をまざまざと感じました。上記の会議で、私がたった一人の日本人参加者であることは少なくないのですが、台湾からは大代表団を組んで政治家や外交官が参加することが珍しくなく、パネルでも必ずハイレベル登壇者を出しています。彼らがロシアによるウクライナ侵略を引き合いに出しながら、台湾の危機的な状況を訴える場面に何度も出くわしました。

その一方で、台湾の研究者や実務担当者と対面やオンラインで直接議論をすると、「台湾ではまだまだロシアの軍事や安全保障の研究者は少ないし、ましてやウクライナに詳しい専門家はもっと少ない。これは大変によろしくない」と皆さん仰います。関心はあるけれど、ロシアやウクライナに関する研究上の知見は米国や欧州から得ているのが現状のようです(この関連で、小泉悠先生の出演したYoutubeなどを見ておられる研究者も多いとか)。

そのようなかで、ウクライナ側に立って実際に戦争に参加した台湾人がいると言う情報を紹介した上で、彼の経験を詳細に紹介する安田さんの記事は、これまでの研究ではなかなか得られなかった知見だったので、大変興味深く思いました。

2)「台湾の民間防衛レクチャー施設「全民国防射撃教育中心」のコーチ(台湾軍のほか米軍でも勤務歴あり)に事情を尋ねたところ、台湾人義勇兵はすくなくとも十数人はいたそうである。」(前編)

↑ 十数人!結構いるのですね。私が個人的に交流した台湾の研究者ら、および台湾に研究目的で訪れているウクライナ軍関係者からは、「台湾義勇兵がいることは確実だが、その数はわからない」ということでしたので、今回初めて具体的な数字をみました。

なお、この義勇兵の呂子豪さんが戦闘に参加されていたのは、侵略の比較的初期の段階のようです(前編に「2022年3月16日、自分で10万台湾ドル(約50万円)分の物資を持ってウクライナに行ったんだ」、後編には「僕が2022年6月22日に部隊を離れる際」とありますから、3ヶ月強ですね)。この十数人がそれぞれどれくらいの期間ウクライナ義勇兵となっていたのか、気になります。

なおこの関連では、以下の指摘も極めて重要かつタイムリーです。

3)「ちなみに、戦況の変化や指揮系統の問題などさまざまな理由から、ウクライナの国際部隊は昨年末時点で解散された模様だ(ウクライナ側のまずい運用による戦死者の続出や、当初は軍隊経験がある者だけを採用していたのが未経験者もOKになって義勇兵の質が低下したことなど、問題点を指摘する声もある)。」(後編)

↑ 2025年末段階での国際部隊の解散情報に関しては、私も気になっていたところでした。というのも、2025年11月段階で、ウクライナの独立系メディア「キーウ・インディペンデント」が、「外国人志願兵を受け入れてきた主要な国際部隊を実質的に解体し、他の編成に散らす計画」とする関係者情報を独占報道していたからです。

「キーウ・インディペンデント」はもともと政権に非常に批判的な記事が多いのですが、この記事では、安田さんの記事で指摘されているような国際舞台の運用上の問題も同様に指摘しつつ、「国際舞台を他の編成に編成し直せば、短期的にはそちらのほうが不適合を起こしやすく、リスクを高めるのでは」との懸念が押し出されていました。

これを受け、ウクライナ国防省側も反応を出しておりまして、

・「国際部隊」は単一部隊ではなく、複数組織にまたがる外国人部隊の総称である

・ 現在変化しているのは主として、地上軍・地上軍・地域防衛(TDF)の歩兵大隊が再編・統合されている点である

・ したがってこれは「解散(dissolution)」ではなく、これまでなんらかのかたちで外国人部隊に属していた外国人は、国防省情報総局(DIU/GUR)配下や国家親衛隊への編成などを通じて、継続して活動する

としています。

こうした再編成の背景には、まさに安田さんの記事にあったような国際部隊の問題があったことはほぼ間違いないと思われますところ、安田さんの記事はウクライナ国際部隊の事情や諸問題に関する情報を台湾側から補強した点で、価値が高いと考えています。

4)「(義勇兵の出身国は)世界各国だ。西欧系の人たちはもちろん、コロンビアとか、僕たち台湾よりも生活水準が悪いであろう国の人もいた」「義勇兵たちは、なんとなく英語を使う連中とスペイン語を使う連中に分かれてた。」(ともに前編)

↑ これも、「ウクライナ側に立って戦闘に参加する義勇兵には南米出身者が多い」という、これまでも比較的広く指摘されていたことを、台湾側からの情報によって補強する記述です。

個人的なことになりますが、2026年は南米諸国の方々に対して、ロシアによるウクライナ侵略について講演をさせていただく機会をいただいており、「なぜ、一見ウクライナに対して冷淡に見える南米諸国から、少なくない義勇兵がウクライナに向かっているのか」についてはしっかり考えておきたいところだと思っていました。

5)「だが、これは別の事態も意味する。仮に台湾が即座に侵略に屈服せずに持ちこたえた場合、日本が各国の義勇兵の非公式的な送り出し元になる可能性が出てくるからだ(地理的に日本以外にできる国がない)。近年の台湾との友好関係を考慮すると、義勇兵に志願する日本人も相当多く出る。日本政府には頭の痛い問題になるだろう

台湾というクッションをはさんで考えると、遠いウクライナで起きている事態も、がぜん身近な話になってくる。開戦から4年を経たいまだからこそ、考えておきたいことは多い。」(後編)

↑ この記事の最大の読みどころはここだとおもわれたため、若干長くなりましたが直接引用させていただきました。私自身はいままで、「ロシアによるウクライナ侵略が東アジア国際政治にどのような影響を与える(与えうる)のか」という観点から話をすることが圧倒的に多かったのですが、それはあくまで各国間のパワーバランスや同盟・連携関係の変質と継続等の観点からみていたのであって、「日本人が義勇兵として台湾有事に参加しようとするのでは」「各国の義勇兵の送り出し元になるのでは」とは明確に考えたことはなく、正直なところ頭を殴られたような衝撃でした。こうした見方があることはヨーロッパの研究者らに早速紹介しつつ、私自身もじっくり考えていきたいと思います。

安田さんの記事の興味深い点はまだまだありますので、ぜひ皆様も読んでいただきたいと思います。ともあれ、ロシアによるウクライナ侵略から4年目の節目に、台湾のいち個人の視点からこの問題をじっくりと掘り下げてくださったこの記事は、極めて貴重だと感じました。

・・・

なお完全に余談ですが、「前編」で粗末なスープにあわせて生のネギをかじる話と写真が出てきましたが、ああやってご飯の添え物として生のネギをかじるのは、ウクライナでは割とあります。(ちなみに私は、刻んである生ネギは全然大丈夫なのですが、写真のように丸のままのネギをかじるのは少々苦手であります…)

無料で「東野篤子が読み解くヨーロッパ国際政治」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

読者限定
「タタリガミ」さん(@Tatarigami_UA)から日本への「お手紙」
読者限定
「エプスタイン文書」のトリセツ:やっていいこと、ダメなこと
読者限定
2月の出演・登壇情報(6件):theLetter読者の皆様に一足早くお知らせします
読者限定
「全面侵攻の4年、私たちがウクライナにできること」東野篤子の視点
読者限定
「地滑り的勝利」のあとには何が来るのか?ヨーロッパの事例から
誰でも
【あらためまして告知】ロシアによるウクライナ侵略丸四年。theLetterでイベントを行います!
誰でも
東京新聞のコラム削除をめぐって
読者限定
トランプ政権は、本当に国際法を「完全に無視」しているのか?